レズビアン官能小説長編「年の差レズビアン・ディープ・ラブ」(第11話)
美由紀は庁舎のチャイムで昼休憩に入ったことに気づいた。
精算機から立ち上がってロッカールームに一旦戻り、スマホとお弁当を出してから奥の休憩室へ向かった。
美由紀は窓口で印紙の販売をしていた。
窓口業務は毎日朝一番と昼明け、月末などはそこそこ混雑したが、数年前に精算機が導入されてから仕事は大幅に楽になり、お役所仕事ということもあって開始時刻と終了時刻が徹底されているため毎日定時に上れるのもよかった。
休憩室に入るといつもの顔ぶれがそろって昼食をとっていた。
休憩室を利用するのは女性ばかりで、男性職員はほとんどが自分のデスクで食べている。
美由紀は同僚が集まるいつもの窓際の席に座った。
カーテンのすき間からのぞく空は晴れ渡っていて、敷地に植えられた草木は青々としていた。
「あ、林さんのお弁当、おいしそう」
美由紀は軽く愛想笑いだけして黙々と食べ始めた。
お弁当は昨夜つくねと厚焼き玉子、ウインナー、ブロッコリーとプチトマト、それにチャーハンの残りと空いたスペースにひじきを詰めたもので、おいしそうと言ったがごく普通だった。
美由紀はさっさと食べ終えて席を立つと、流し台で弁当箱を洗ってロッカーのバッグに片付けた。それから庁舎の裏口にある自動販売機スペースに向かった。
屋根つきの吹きさらしで、少し前に喫煙コーナーが撤去されてから男性職員の姿もまばらになって、気分転換をするにはちょうどいい場所だった。
イヤホンで音楽を聴きながら通りの向かいに目をやると、電柱により添うようにすわるキジトラ柄の猫と目が合って、美由紀は軽くウインクしてみた。
スマホを開いて受信メールをチェックすると、以前セフレだった乃亜からのメールが混じっていた。乃亜は六つ年上で一年半前にアプリで知り合って、それから半年前くらいまで月2、3位のペースで遊んだ仲だった。乃亜には男がいた。
美由紀はふと口にしてしまう自分の何気ないひと言が、周囲をドン引きさせたり、相手を軽く傷つけてしまうことがあったが、乃亜も美由紀の言葉がきっかけで最後自然消滅したような感じだった。
“ごめんね。美由紀に会いたい、会いたい”
美由紀はスマホの画面を閉じて、もう一度通りの向かいに目をやった。
猫はもういなくなっていた。
時計を見ると休憩終了10分前だった。
美由紀は途中トイレに立ち寄って、鏡の前で髪をしばり直した。髪をかき上げてふと耳にイヤホンをつけたままだったことに気づいて、あわててポケットにしまった。
仕事を終えていつも通り6時半過ぎに自宅に着いた。
途中スーパーで買ったチューハイやドライフルーツ、野菜やお菓子をテーブルに並べて、チューハイだけ冷蔵庫にしまった。
スマホを見ると乃亜からまたメールが二通届いていた。
“さっき突然メールしてごめんなさい。彼と別れた。会えないのわかってます”
“やっぱり寂しい。美由紀に会いたい”
美由紀はスマホの画面を閉じて、それからシャワーを浴びた。お風呂から上がって時計を見ると8時を少し回っていた。
テレビをつけてチューハイを開けて、ドライヤーで髪を乾かしてからベッドに横になった。
乃亜とはお互い体を知り尽くした仲だったからその意味で相性はよかったが、乃亜が望んだ「セフレ以上の関係」にはなりえなかった。
ベッドに仰向けになっているとそのまま寝落ちしてしまいそうな気がして体を起こした。それからチューハイの空いたグラスをもって台所に行って、冷蔵庫からもう一本缶チューハイを開けた。
アルコールが少し回ってきたせいもあって気分がよかった。ほろ酔い気分で明日の弁当の準備をしていたら、ふいに乃亜とSMホテルに泊まった夜のことを思い出して、一瞬膣がぎゅぎゅっと痙攣したような気がした。
「筧乃亜……」
SMホテルに入った日は、直前に近くの海辺に車を止めて二人でD・Guettaの「Titanium」を熱唱していた。
そこに三人組の男がやって来てしつこく絡んできた。すぐに軽い諍いになったが、リーダー格の男がドアを足でドンと蹴ってきた。美由紀はちょっと頭に来て、股間を蹴り上げてやろうと運転席から降りたが、横から乃亜が美由紀の体を押しのけて先に股間を蹴り上げた。それからすぐにホテルに入った。乃亜は部屋にあったXの文字を模った真っ赤な拘束具にぶら下がりながら、“アイツの玉は小さかった”と得意げに笑っていた。
美由紀は乃亜の顔を思い出してちょっと吹いた。
コンロの火を止めて一旦ベッドに戻って、枕元に出しっぱなしだったローターをクリトリスに少し強めに押し当ててスイッチを入れた。
それから乃亜を後ろ手に縛ってその顔にまたがって、息ができないと悶える声を聞きながらディルドで激しく突いた夜を思い出しながら果てた。