レズビアン官能小説長編「年の差レズビアン・ディープ・ラブ」(第20話)
“差出人:Slave”
化粧も身支度も終えて、もうすぐ家を出ようというタイミングでメールが入った。
メールは届くタイミングも数もその時々でばらばらで、深夜に届くこともあれば、今朝のように朝突然届くこともある。
内容はオナニー指示と体を疼かせようとする卑猥なメッセージがほとんどで、時々いやらしい質問やチャットルームへの誘いなどが来る。
紗弥は空いた時間にそれに目を通して、気分が乗っているときだけ返信するようにしていたが、興味本位で開いてしまうと本当に体が疼いてしまうことがあった。中には簡単なひと言メールもあり、うっかりそれに答えてしまうと目が離せなくなることもあって少し注意が必要だった。
「紗弥、アイスコーヒー残ってるけどもう飲まないの?」
台所から澪の声が聞こえて、紗弥はあわてて食卓に走った。
「氷が溶けてもう薄くなっちゃってるけど」
澪は笑いながらコーヒーのグラスを振って見せた。
紗弥は知り合いに紹介してもらった小さなデザイン会社で事務をする傍ら、フリーモデルをやっていた。
デザイン会社は20代の男の子が二人いるだけの会社で、マンションの一室が事務所だった。
社長は女性で他にエステと占い屋、それに美容室を経営していたため不在が多く、紗弥はその会社の事務と社長の代わりを少し任されていた。
フリーのモデル業は、通販型アパレルショップの女性向けファッションのモデルがほとんどで、定期契約のみを結んで依頼があるとスタジオに入るという不定期の仕事だった。
紗弥はデザイン会社の事務を本業としていたが、社長がモデルの仕事をすすめてくれたため、二つの仕事は微妙につながっていた。臨時収入を含めるとモデル業の方が稼げる月がよくある。
今日は都内のスタジオに向かう日で、いつも通り中高年女性向けファッションの撮影が待っている。
紗弥は足早に車に乗り込むと、マンションの駐車場を出た。
スタジオに入ると、紗弥の他に三人のモデルさんが先に来ていた。
ショップごとに集まる顔ぶれはいつも大体同じで、商品の入荷時期や商品ごとのターゲット層に応じてメンバーが少し入れ替わる程度だった。
今日はよく知る顔ぶれで紗弥はちょっと安堵した。
一旦撮影が始まると飲食はもちろん、お手洗いも制限されるため、紗弥はいつもスタイリストなどがつく前と後に二度トイレに行った。
トイレは少し広めのスペースに洗面台がついた一人用で、壁にはエアプランツやブーケなどが飾ってあった。
スマホを見ると、澪から
“ランキングトップの紗弥、また見たいな!”
とメッセージが入っていた。
以前、紗弥がモデルをした服がたまたまヒットして、通販サイトのトップにいくつも載った時、二人でタコパをして盛り上がったのを思い出した。
それからメールアプリを開くと、受信フォルダに沢山のメールが入っていた。
“差出人:Slave”
メールにはすべてクリップアイコンが付いていて、Slaveがいつも通り卑猥な画像を添付していることが分かった。
あまり気乗りしなかったが、今朝から10通以上届いているSlaveからのメールが少しだけ気になって未読メールの真ん中くらいを1通開いてみた。
“オレはさやのクリトリスが勃起しやすいことを知ってるぞ。さやは淫乱勃起クリ女だからな。それに——”