レズビアン官能小説長編「年の差レズビアン・ディープ・ラブ」(第21話)
美由紀は仕事を終えたその足で「徳島らーめん」に寄った。
スープを豚骨にしようか塩にしようか迷ったが、店主と睨めっこをしながら3分考えて豚骨にした。
ラーメンが来るまでスマホをいじりながら待とうと思った。
今日はマッチングアプリのメッセージがたくさん届いているようだった。
薗華からその後メッセージはなかったが、立て続けにメッセージを送ってこられるのが苦手だったし、そういう相手に限って会話目的だったりエロだけ、または中身がいないサクラだったため、美由紀の経験則から薗華とはリアルに会えそうな予感がした。また日が近くなったら時間や場所を決めればいいと思った。
初めて会う40代の女性で、まるで想像はつかなかったが、相性が合えばいいなと思った。
今までマッチングアプリで出会った交際前提の女性とはあまり続かなかった。向こうは気に入ってくれたが、合わないことに気づいて二人とも会うのをやめた。
趣味や好きな食べ物、ペットを飼うなら、職場のこと、過去の彼女のことなどを根ほり葉ほり訊かれて、答えないと隠していると詰め寄られるのが苦手だった。気持ちは理解できたが、そこに触れてこない女性に惹かれた。
体の相性は大事だった。
あとは付き合ってみないと分からないし、少しずつ共通点が見つかるとうれしかった。
ルックスや仕事、過去などは後回しでも気にならなかった。風変わりでもよかった。
どうでもいいわけではなく、“二人で始める”今とこれからに興味があった。
しいていえば、話してないのに通じ合えたり、偶然同じものが欲しくなったり、そういう仲には心がときめいた。
「おまちどうさまです」
「いただきます」
美由紀が好きな徳島らーめんの「豚骨ラーメン」が来た。
好きなものを後に残すのが美由紀の食べ方で、親には行儀が悪いと言われたが、チャーシューだけはどんぶりのふちに寄せた。おいしそうな分厚いチャーシューが今日は一段と輝いて見えた。
美由紀は一人で外食することはめったになかったが、徳島らーめんだけは別枠で通っていた。
美由紀好みの豚骨、塩スープに分厚いチャーシューがのったあっさり系のラーメンで、友達とたまたま入ったのがきっかけだった。
カウンター席で女一人がラーメンを食べることの世間の目は知っていたが、そもそも世間体などどうでもいい美由紀には無縁だった。しいていえば、カウンターテーブルに木製の仕切り板があり、隣の客と顔を合わせたり、外から見られることが無い分、ここのお店は美由紀には好都合だった。
以前、乃亜においしいラーメンをどこか知らないかと尋ねられたが、徳島らーめんは教えなかった。
美由紀は人に合わせるのも、合わせられるのも嫌いだったから、「おいしいでしょう?と」尋ねることも「おいしいね」と言われることもどうでもよかった。
その時、美由紀は徳島らーめんが食べたかったが、教えると“特別感”が薄れる気がして言うのをやめた。
人がどうでもいいと思うものでも、特別に思えるものが美由紀には色々あった。
乃亜は適当なラーメン屋に入って「美味い!」といって食べていたが、美由紀には普通だった。
あれからメールはないが、乃亜のことは美由紀が一番よく知っているつもりでいた。