レズビアン官能小説長編「年の差レズビアン・ディープ・ラブ」(第54話)
「見るだけならいいよ」
アヤカにとってほんの暇つぶしだった。
SNSのせっかちな“見せろ男”や画像くれくれ男は性に合わなかった。文字だけのやり取りで、あくまで自分のペースでのんびり楽しめるツーショットチャットがアヤカのお気に入りだった。
地域限定のチャット部屋で話したその男の子は、アヤカの5つ年下で名前を「かなた」といった。漢字では“哉太”と書くと教えてくれた。
雑談から始まって“本題”に入るまで哉太は一時間を要した。
アヤカは暇つぶしだったから途中で適当に切り上げようと思っていたが、言葉の端々に哉太の一生懸命さを垣間見て、本題まで気長に付き合ってみた。この哉太という男の子が何をどう切り出して一体どういう展開を期待しているのか、ちょっと興味があった。
哉太はチャットを楽しんでいるようだった。
趣味は車いじりで、愛車のシビックは車高を下げたりマフラーを変えたりしているのだと言った。アヤカにも熱心に車の話を振ってきたが、アヤカ自身は車にあまり興味がなかったからBMWに乗っているとだけ答えて、適当に受け流した。
親に買ってもらった車で、はずれだったのか色々と手がかかったせいであまり好きではなかった。
「そんなにオナニーしてるところを見せたいの? 変態だね。見せてどうするの?」
「何もしないです。ただ見られたくて」
「そう。それなら会ってもいいよ。その代わり見るだけね。何もしないよ?」
「ありがとうございます!」
哉太は隣の県から車でわざわざ来るのだと言っていた。“見せるため”だけにやって来る健気な哉太がちょっと可愛かった。
待ち合わせは午後8時、隣町の大型スーパーの駐車場で、時間も場所もアヤカが指定した。人目についても人気のない場所よりは安心だった。チャットでは好青年な印象だったが、以前、待ち合わせをした男が歳も容姿もでたらめだったため一応用心した。
変態という前提において容姿や年齢は二の次だったから、嘘がなければそのまま落ち合ったが、一目で分かるような大きな嘘を交える会話には、アヤカはただの一分も時間を割きたくはなかった。
アヤカは待ち合わせ時間より少し前に到着して、スーパーの敷地から少し離れたコインパーキングに車を入れた。
哉太は身長172センチの中肉で、顔も髪型も普通だと言った。ようするに今どきのあんな感じかとアヤカは適当にイメージした。
哉太は午後8時ちょうどに駐車場に入ってきてアヤカは笑った。いい奴だと思った。事前に車の特徴を聞いていたし、メアドも交換していたが、それがなくても一目で分かる登場っぷりだった。いわゆる爆音で、かっこつけたい盛りの俗な感じの登場だった。敷地に入るなり、大げさにアクセルを踏んで軽くぐるっと回って見せて、それから待ち合わせをした二番入口の前にやって来た。おそらく“コレ”に乗れと言うのだろうとアヤカは苦笑した。可愛かった。
「こんばんは、はじめまして! 哉太です!」