レズビアン官能小説長編「年の差レズビアン・ディープ・ラブ」(第39話)
パン屋「サンジェルマン」の前に止まっていた車は、愛良が乗っている車と同じ車種の色違いだった。愛良は前にキャンバスという車だと教えてくれたが、その車の後ろにもキャンバスのロゴが付いていて、園花は色違いに気づくのに少し時間がかかった。
美由紀はマッチングアプリで見たままの愛良より少し強めのハイライトを入れたロングのポニーテールに、白のスリーブレスTシャツとベージュのチノパン姿で運転席に座っていた。すごくきれいな女性だった。びっくりした。
愛良と同じで色白で、派手なのは髪だけ。目立ち鼻立ちはくっきりしているものの、控えめなメイクせいでどちらかというと大人しめな印象で、アプリのプロフィールには“S気が強く責め好き”とあったが、とてもそんな風には見えなかった。愛良と同じでギャップから感じる魅力がすごかった。
川沿いに車を止めて二人でパンを食べたが、美由紀は化粧くずれなんか気にせず、パンにかぶりついておいしそうに食べる姿が可愛かった。口の周りにたらこクリームが付いていて、「ついてるよ」と指で教えると指でとってくわえる姿に園花はちょっと萌えた。
園花にとって美由紀はマッチングアプリで会った初めての相手だったが、二人で話しをしたり笑い合いながら、世の中にこんな出会いもあるのかと思ったし、今日は来てよかった、美由紀に出会えてよかったと心の底から思った。
しばらく一緒に過ごすうちに、美由紀のことが少しずつ分かってきた。
話し方に抑揚があってどんな話題でも引き込まれてしまうくらい話し上手なこと、ジャンルを問わず音楽が好きなこと。楽器にも詳しいこと。ぷるっとした唇が印象的なこと。どこからどうみても女性的なのに、時々遠目で何か見つめながら無言になる時の横顔がかっこいいこと、不意に男の子のような口調になって何だかそれもかっこいいこと。両手で髪をアップにする癖があること、表情は穏やかなのに時々威圧するような目力があること、それに底抜けにエロくてS気が強く責め好きだったこと。
「ね、園花さん、ホテル行きましょうよ」
美由紀の言葉に園花は一瞬動揺した。口調は穏やかだったし、むしろそれまでの会話の延長線上のようなごく自然な話しぶりでそのひと言は突然出た。
ホテルに向かうパターンもあるかも知れないとは思っていた。異性が落ち合ってホテルに向かう出会いがあるように、女性同士でも即ホテルの出会いがあっても何ら不思議はないと思っていた。