レズビアン官能小説長編「年の差レズビアン・ディープ・ラブ」(第57話)
スーパーを出ると亜沙美が手をつないできた。美智代がその手を少し大げさに握り返すと、亜沙美はにこっと笑って楽しそうに腕を大きく振った。
空気が澄んでいて、晴れ渡った夜空にはいくつも星が瞬いていた。気分がよかった。
「楽しかったね。美智代も私もノーパンでショッピング。ちょっとドキドキした」
亜沙美はエコバッグを軽く持ち上げて、無邪気な笑顔を浮かべていた。美智代も楽しかった。久しぶりに誰かと笑えた夜だった。
ひょんなきっかけで再会した亜沙美だったが、たった半日過ごしただけなのに、まるで付き合いの長い旧友のように感じられた。ホテルで感じた妙な連帯感をカフェで確認し合って、亜沙美に言われるままに体を弄り合っただけなのに、美智代は愛良と遊んで以来のときめきを覚えていた。
車にたどり着くと、亜沙美がすぐに身を寄せてキスをしてきた。美智代は思わず息が上がって、その体にしがみついた。もう抑えることのできない衝動に駆られている自分に、美智代は少しためらった。
「亜沙美はもう帰るの?」
「生もの買ったしそのつもりだけど。まだ遊びたい?」
「うん!」
美智代は帰りたくなくて、あえて生ものは買わずにいた。
「じゃあ一度家に寄ってくれる? 生ものだけ冷蔵庫にしまったら付き合うよ」
「ほんと? じゃあそうする!」
美智代は誰もいない家に帰りたくなかった。もう少し一緒に過ごして、できれば二人で夜を明かしたいと思うくらい亜沙美にすがる自分がいた。
亜沙美は髪をかき上げて、フロントガラス越しに夜空を見上げながら楽しそうに笑っていた。美智代はエンジンをかけると、スーパーを駐車場を出発した。
「うん、そこの角を右に曲がって。そしたら右にマンション見えてくる」
亜沙美のマンションは美智代の自宅から車で30分くらい離れた閑静な住宅街の一角にあった。
「おまたせ。ノーパンでジーパンが嫌だったから着替えてきた」
亜沙美は白いTシャツに薄地でグレーのパーカーを羽織って、おそらくセットアップのグレーのレギスカに穿き替えて登場した。車に乗り込みながら、舌を出して変顔をして見せる亜沙美が可愛かった。
「もう8時回ってるけど美智代はどこ行きたい? お茶でもする? 運転あるから飲めないじゃん」
「何も決めてないけど、思いつきで走りだしてもいい?」
「いいよ。何かさ、こうやって、こんな時間に誰かと出歩くの学生時分以来だからときめくのよね」
「単身赴任で一人なら、普段気ままに出歩いてるのかと思ってた」
「ないない。美智代もそうでしょ? 一人だとテンション上がらないじゃん」
「だよね」
亜沙美はとくに行きたい場所が思い浮かばないと言うから、美智代はとりあえず幹線道路に走りながら、思いつきで行き先を決めようと思った。
「レッツゴー!」
亜沙美の無邪気なかけ声に合わせて美智代はアクセルを踏み込んだ。
亜沙美はまるで大学時代に戻ったみたいだと終始大はしゃぎだった。途中空腹を覚えて、ファミリーレストランでも寄ろうかという話が出たが、亜沙美は通りすがりのケバブのお店で行き当たりばったりの「持ち帰りケバブサンド」を選んだ。
「こういうひと時って幸せ感じるのよね。ケバブサンド、正解だったでしょ?」
「うん! 美味しいね」
「美智代と会えてさ、なんか運命感じるわ。ケバブ美味し過ぎるもん」