レズビアン官能小説長編「年の差レズビアン・ディープ・ラブ」(第41話)
“どうした。元気か?半年ぶりじゃん”
「美由紀……」
“メールしてきたから、乃亜のこと思い出してオナニーしてたんだ。元気かよ”
“で、子供。できそうなのか?”
電話は乃亜がした。
電話に出たのは、あの頃の、あの時のままの“いつもの美由紀の声”だった。その美由紀が子供のことを尋ねてきて、途端に涙が込み上げてきた。乃亜は涙が止まらなくなった。
乃亜の「3年ルール」は仕事で期限を設けるように、恋愛には必要だった。いい意味でも悪い意味でも必要だった。ただ誤算だったのは、美由紀と出会ったことで今度の3年が“母親になる最後の期限”だということだった。別れた男への恋愛感情などはまるでなかったが、ただ子供が少し、ほんの少しだけ欲しいような気がした。
美由紀との交際を絶つなら意地でも結婚をして、母親にならなければならなかった。それが美由紀への誠意だった。でも踏み出せなかった。結局、美由紀を失望させ、期限の3年も経過した。子供をとるか美由紀をとるか、乃亜にはどうしても決められなかった。美由紀は目の前にいてくれたが、子供はいなかった。そんな選択を迫られたことはなかったし、だからといってただの言い訳にしかならなかった。あの時、美由紀は優柔不断は嫌いだと言った。その通りだった。
“ん……? おいおい、泣いてるのか?”
「声が、聞きたかった。美由紀の声が聞きたかった」
“乃亜って、あの天下無敵の乃亜さまじゃないのかよ”
「子供…… やめたんだ。踏み出せなかった」
“やめたのか、あは。相変わらずだな。そんなことで泣くなよ”
「あのさ……」
“会おう、だろ? 私も会いたいなって思ってた。迎えに来てくれるか?会おうぜ”
「いい…… のか?」
“いいも悪いもその電話だろ? どれくらいで来れる?”
美由紀のマンションは車で30分のニュータウンの一角にあった。
乃亜が到着すると、美由紀はすでにマンションの下で待っていてくれた。美由紀はノーメイクでモスグリーンのカットソーワンピにジーンズを穿いて、初めて見る編み上げのヒールサンダルを履いて立っていた。髪は後ろでゆるめにまとめていた。車を見ると笑顔で近づいてきた。
「あは、乃亜。相変わらずベンツ、ぴっかぴかだな」
「来ちまった……」
「もう、晩ご飯食べたのか? おいしいおいしいラーメン、食べに行くか?」
「うん、い、行きたい」