官能小説(短編)/選べない! 二股恋愛と罪悪感
占いの館「Freya(フレイヤ)」は、よく当たると口コミで有名な占いの店で、隣町の駅前にある。
雑誌など各メディアから出演依頼が来るほど凄腕の専属占い師が多数在籍していて、占い業界をよく知る利用者の間でも、かなり的中率が高いと評判だ。
フレイヤは完全予約制で、長い時では二か月ほど待たされることもあったため、利用者の中にはようやく入店できるその日に備えて、仕事や学校を休んで訪れる客もいると聞いた。
フレイヤは他の店のように客が占い師を指名するのではなく、利用者が抱えるそれぞれの悩みに応じて、店が適した占術とその適任占い師を選ぶという形をとっている。
占い師にはそれぞれ名前があったが、完全予約制であることと、店側が占い師を選ぶというシステム上、客がその名前を覚えたとしても次また会えるかは運、または不明だった。
麻紀は十日前にフレイヤから鑑定の日時が確定したとお知らせメールを受けて、その当日である今日、占いの館「フレイヤ」に向かっている。
鑑定開始時刻は午後四時で、利用時間は一時間だった。本当は二時間を希望していたが、麻紀の悩みを鑑定するにあたっては二時間ではなく、一時間の方が自身のために良いと言われ、急きょ変更したような形だった。
麻紀は職場の同僚である悠馬と、知人つながりの一樹との二股恋愛で悩んでいた。
悠馬とは、今の職場に勤め始めてすぐに知り合って、意気投合し交際を始めたが、その後、プライベートで知人伝いに一樹と知り合ってしまい、どっちつかずの状態に陥っていた。
二人とも優しくて、会うといつも麻紀のことを一番に接してくれたし、男気があってちょっとしたイケメンで、気づくとどちらにも本気で恋をしている自分がいた。
悠馬は28歳で身長175センチ位の運動好きのスポーツマンタイプで、麻紀と同じ人材派遣会社に勤めていた。平日はフィットネスジムに通い、休日もサイクリングやボクシングジムで体を動かすイケメンだった。
一樹は31歳、身長173センチで、アプリ開発の会社に勤めていた。パソコンを片手にプログラミングや動画編集、またウェブマーケティングというジャンルの知識に長けていて、眼鏡がよく似合うイケメンで、どちらかというとインドア派だったが、腹筋が割れていたり、体を鍛えるのが好きだった。
ただ二人とも休日が日曜日のみで、平日は仕事の都合で会う機会に恵まれなかったため、唯一の日曜日に、場合によってはブッキングしそうな状況でデートするしかなかった。