瑠衣が視線を逸らして首を振ると、女性は
「ぐりこ」
と呟いた。
不意にスカートの中をぐるぐるしていた二本の指がまるで人の両足のように立ち上がって奥へ歩いてくる。
(な、何なに!? じゃんけんグリコって、一体何なの!?)
瑠衣は激しく首を振る。
一瞬、聞き間違えたかと思ったが、直後にまた女性が“ぐりこ”と言ったせいで瑠衣はパニックに陥る。
女性は怯える瑠衣など気にも留めないそぶりで、続けて
「ぱいなつぷる」
と呟きながらリズミカルに指を動かし始めた。
その“足取り”が無邪気なステップにも感じられて思わず寒気が走る。
(やめてやめて、お願いおねがい! 何、なに……っ!?)
パイナップルは知っているが“ぱいなつぷる”と言う人など知らない。
意味不明な言葉ととともに股間の深部へと歩み寄ってくる指づかいに鳥肌が止まらない。
(この人おかしい、変な人……お願いもうやめて!)
「ちよこれい——」
女性が再び呪文のような不気味な言葉を唱え始めた瞬間、窓が激しく揺れて轟音とともに辺りに眩い光が差し込んできた。
トンネルを抜けた車両は大きく揺れたが、それとは別の力が太ももの付け根に加わえられてストッキングが裂ける音がする。
「ぁあッ」
何もかもがおかしかった。
思い返せば初めからまるでおかしなめぐり合わせだった。
そう気づいたときに向かいのシートへ移るべきだった。
女性の指が裂かれたストッキングのすき間から侵入してきてショーツ越しの割れ目を撫で上げる。
「ぃあっぁあ……ッ」
どこをどう身構えればいいのか分からないままもがいていると、その手に一層力が込められてすぐに割れ目の深部にまで入ってきた。
リーダーの品格を示すために新調した黒いレースのショーツが粘膜にまで食い込んできてたまらず唇を噛んだ。
クロッチがヌルヌルに濡れている意味も分からないし、この状況で変な息が洩れ始めている自分も嫌だった。
クマのチョコレートに踊らされてあーんと口を開けたのが馬鹿だったと瑠衣は今更ながら自分を呪ったが、次の瞬間女性の指先がショーツの脇から中に入ってきて思わず呻き声が洩れた。
いやらしい指先が陰部の粘膜をくまなく撫で回す。
「んあ……っぃああ……ッ」
瑠衣は理性を保とうと首を振って堪えるもすでに子宮が激しく興奮していて粘液の分泌が止まらない。
意に反して込み上げてくる性感に腰がひとりでに動き始める。
視界がぼやけて意識が遠のくなか必死にすがりつく場所を探したが、バッグに目を落とすとピンク色の箱が飛び込んできて絶句した。