【レズ痴漢】クマちゃんのバレンタインチョコ

痴漢

 瑠衣は少しおかしなめぐり合わせなのだと自分に言い聞かせながら吐息をつく。

「この辺よ。チョコ、このあたり」

 女性は自分の下唇を舌でべろっと舐めて見せる。

 示された辺りを指で拭いながら、なおも体を寄せてくる女性から視線を逸らした。

 女性の指先は内ももを伝ってスカートの中にまで入りつつある。

 瑠衣は女性の手から逃れるように首をすくめて足を閉じると窓の外を覗き込んだ。

 いつものトンネルなのに今日に限って長く感じられる。

 ふと窓ガラスに車内の風景が反射して背広姿の年配の男性が見えて目を凝らすと、駅で時々見かける同じ時間帯の通勤客だった。

 通路を挟んだ反対側のボックスシートの向かいの座席に座って腕を組んで居眠りをしているようである。

 知り合いでなくても、顔を合わせる誰かにはあまり見られたくない状況だった。

 距離感が不自然なうえ女性同士という点も妙に映るに違いない。

「チョコが伸びてるわよ」

 不意に耳元で女性の声がして瑠衣は軽く飛び上がる。

「チョコが頬まで伸びたわ」

「ご、ごめんなさい。びっくりしてしまって……」

 瑠衣は慌てて頭を下げるも女性の指先は相変わらず内ももの間をもぞもぞ這い回っていて、この上ない違和感に変な汗までかいている自分が嫌だった。

 ぐるぐる回る指先は明らかにスカートの奥に入ってきている。

 這い上がってくる指の動きに合わせて体も密着してくる。

 太ももを撫でられている意味が分からないし、いつ肩を抱かれたのかもつい先ほどのことなのに思い出せない。

 単調な指の動きが気になって思考をさらに鈍らせる。

 とにかく太ももを撫でないで欲しかった。

 動揺していて気付かなかったが、ふと指の数が二本に増えていることに気がついて瑠衣は思わず絶句する。

 それだけではなかった。

 女性の手から逃れるように体を丸めて縮こまっていたつもりが、目を凝らして見回してみるとそこがすでに女性の胸の中であることに愕然とした。

 ただならぬ状況にすでに手足が思うように動かせず、上体を起こそうにも力強く肩を抱き寄せられているせいでびくともしなかった。

 つい先ほどまで嫌味のない香りに感じられたイランイランが鼻について、むせるような甘ったるい臭気に意識がもうろうとし始めている。

 右の頬に当たる妙に柔らかい感触が女性の胸であることを知って思わず委縮してしまう自分も嫌だった。

 女性の右手は相変わらず内ももをぐるぐると撫で回していてますます思考力が奪われる。

(何なのこの人、何者なの)

 次の瞬間、女性が覗き込むように顔を寄せてきて

「じゃんけんグリコ、知ってる?」

 とささやいてきた。

「!?」

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